GERHARD RICHTER: ÜBERMALTE FOTOGRAFIEN / OVERPAINTED PHOTOGRAPHS by Gerhard Richter
ドイツ人画家、ゲルハルト・リヒター(Gerhard Richter)の作品集。本書は2023年8月から11月まで「ドレスデン美術館(STAATLICHE KUNSTSAMMLUNGEN / SKD)」にて開催された展覧会に伴い刊行された。同美術館は、世界で最も重要かつ最古の博物館コンプレックスの一つであり、多数の博物館や機関、図書館をはじめ、「ゲルハルト・リヒター・アーカイヴ(Gerhard Richter Archive)」を有することで知られる。
作者の過去60年間の作品制作は、具象/抽象の視覚的駆け引きの間における対話と対立によって形成されてきた。本シリーズは、その二つのスタイルが共生する類稀なる一作である。1986年にこのシリーズを発表し始め、中でもこの展覧会で見せているのは10x15cmという珍しく小さいスケールの作品群である。
本作は作者自身によって撮影され、ごくありふれた普通の写真ラボで現像されたいわゆるスナップショット、例えば家族のお祝い事、人物、風景、建築物などが、本作に収録されている72作品のベースとなっており、ドレスデンの景観も含んでいる。多くの作品が初めて掲載、刊行されたものとなる。ケルンを拠点に活動を行う作者は、アトリエで大型の絵画作品の制作に取り組んだあとに写真を取り出し、スキージーに残ったまだ乾いていない絵の具を滑らせた。そこで生まれるイメージは確固たる偶然の産物であり、驚くほどの新たなリアリティが浮かび上がってくる。
「写真にはリアリティがほどんどない。ほぼ100%画像である。絵画にはいつもリアリティがある。絵の具に触れることができ、存在感がある。しかし、いつも絵として生まれる。良し悪しは関係ない。全て理論だ。それは良くない。以前、小さな写真を絵の具で塗りつぶした。そしたら問題が少し解決した。とても良いことだった。私がこのテーマについて語れるどんなことよりも良かったのだ。」-ゲルハルト・リヒター、1991年
作者は、2017年に絵画制作を終了する宣言をし、このシリーズも同時に制作を終了している。
Standard photographs taken by Gerhard RICHTER himself and developed in an ordinary photo lab – snapshots of family celebrations, people, landscapes or architecture – serve as the basis for seventy-two images, most of them published for the first time, in the catalog volume ‘Overpainting Photographs’ by Gerhard RICHTER. After the daily work on the large paintings in his studio, the Cologne-based artist pulled these photos through the still wet paint on the squeegee. The result is strongly determined by chance and surprising new realities emerge.