THE PALACE by Mårten Lange [SIGNED]
スウェーデン人フォトグラファー、モルテン・ランゲ(Mårten Lange)の作品集。記憶、歴史、感情の器としてある建築の役割を深く探る一冊。大量の情報を記憶するために印刷機が発明される以前に開発された技法である「記憶の宮殿」というコンセプトに基づいている。
イギリス人小説家のスザンナ・クラーク(Susanna Clarke)にとって二作目の長編『ピラネージ(Piranesi)』に作者が出会った2021年の夏、本作の構想が思いがけずして始まった。2020年に発表されたこの小説は、朽ち果てた広大な宮殿を舞台にしており、迷宮の中で次第に自己意識が解きほぐされていくストーリを描く。クラークの物語は、18世紀イタリアの画家、建築家であるジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ(Giovanni Battista Piranesi)の「幻想の牢獄(原題:Carceri d'Invenzione)」より着想を得ている。ピラネージの銅版画は、果てしなく広く超現実的な建築風景を描き、驚きとともに不穏さも呼び起こす。作者が建築の持つ不気味な在り方とその可能性に魅了されるようになったのは、この文学と芸術の融合がきっかけであった。
「記憶の宮殿」とは、頭の中に仮想の宮殿を作り、そこに情報を置くことで記憶力を向上させる技である。部屋、ドア、廊下を想像し、それぞれにイメージや文章を配置する。現実の場所の断片が置かれることもあれば、宮殿が全て作り上げられた空想であることもある。そして記憶のプロセスは、この空間の中を巡る想像の旅として実行される。本書で作者は、半分廃墟のような、隠し扉や曲がりくねった階段、秘密の庭を持つ迷宮のような建造物を作者なりに構築した。
本書に収録された70枚の写真は、古代から中世までの遺跡や歴史的建造物で撮影されたものである。しかしそのイメージはその場所の記録ではなく、見知らぬものの断片である。歴史の特定の章を切り取るのではなく、過去から永続的に存在するものへの瞑想を我々に与えてくれる。
The Palace, new book exploring the role of architecture as a repository for history, memories and emotions. The work is based around the concept of a memory palace – a technique developed before the invention of the printing press to memorise large amounts of information.
In a memory palace, the practitioner imagines rooms, doors and corridors, each containing an image or a passage of text. There can be fragments of real places, or the palace can be a constructed fantasy. The remembering process is then performed as an imagined journey through this space. In this book, I’ve attempted to construct my own labyrinthine structure, half in ruins, with hidden doors, winding staircases and a secret garden.
The 70 photographs in the book were made at archaeological sites and historic buildings, dating from antiquity to the Middle Ages. However, they are not documentations of these places, but fragments of a stranger whole. Rather than capturing a specific chapter of history, they offer a meditation on the enduring presence of the past.
special thank you to Hasselblad Foundation for providing funding for the production.