CON I MIEI OCCHI – WITH MY EYES
「第60回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展（the 60th Venice Biennale）」におけるバチカン館での展覧会に伴い刊行された作品集。
教皇庁が「ベネチア・ビエンナーレ国際美術展」に参加するのは今回で3度目となる。「教皇聖座（Holy See）」のパビリオンとして展開した記録をまとめた一冊となり、アート、詩、人間性、そして権利がそれぞれ絡み合い、本書に凝縮している。ヴェネツィア、ジュデッカ島の女子刑務所を、物理的かつ概念的に開所し、受刑者（および展覧会関係者）が鑑賞者を案内する形をとっている。受刑者によるこのような積極的関与と参加の実現は前例のない事実として残るだろう。
本プロジェクトは偏見や慣習に挑むものであり、芸術や機関における権力構造について考察することで、社会的・芸術的な力関係に新たな視点をもたらし切り拓くものである。ヴェネツィアの美術館「パラッツォ・グラッシ（Palazzo Grassi）」でディレクターを務めるブルノ・ラシーヌ（Bruno Racine）、フランス・ロレーヌ地方の美術館「ポンピドゥー・センター・メッス（Centre Pompidou-Metz）」のディレクターであるキアラ・パリージ（Chiara Parisi）によるキュレーションのもと、オランダ人グラフィックデザイナー、イルマ・ボーム（Irma Boom）がアートディレクションを手がけ、この刑務所で生きる女性囚人と、プロジェクトに参画した8人の国際的アーティスト陣との間で交わされた対話を記録している。
本書のタイトルでありバチカン館のテーマである「私の目で（CON I MIEI OCCHI – WITH MY EYES）」は古代の聖典とエリザベス朝時代の詩を再現した詩歌の断片から取られている。「愛は目で見るものではない（I do not love thee with mine eyes）」（「ソネット14番（Sonnet 14）より、ウィリアム・シェイクスピア（William Shakespeare）」）は、「あなたをこの目ではっきり見たのです。（My eyes have seen you）」（「ヨブ 記 42:5（verses 42.5 of the Book of Job）」より）と共鳴し、クロスフェードする。ここでのクロスフェードとは、見ることと目で触れることを同義とし、それは目で受け止めることへと変化し、そして視覚と知覚が対話して、やがて消えていくということである。
巻頭には教皇フランシスコ（Pope Francis）による序文を掲載、教皇庁文化教育省長官ジョゼ・トレンティノ・デ・メンドンサ（José Tolentino de Mendonça）枢機卿による寄稿テキストでは、参加アーティストと受刑者、刑務所のスタッフの証言をもとにプロジェクトを分析した内容となっている。
「現役の刑務所を選んだことで、我々は国際的な現代美術を観るような人々にしか届かない芸術的な言及にとどまらず、社会からはじかれてしまった人々が主人公となるような、豊かで複雑な人間的体験に関わることを目指したのだ」キュレーターは語る。「つまり、芸術がいかに人生を変えることができるかを積極的に示し、この原則的に不可解な世界を見ることで来場者の目を変え、受刑者が自分自身を見る目をも変えるのである。本展のタイトルは、この内省や、芸術が我々を誘い、完全なる次元を与えている視線の転換を芸術が促すである」。
キュレーターであり、ロンドン「Serpentine Galleries」のアーティスティック・ディレクターを務めるハンス・ウルリッヒ・オブリスト（Hans Ulrich Obrist）と文学理論家であり哲学者のジュリア・クリステヴァ（Julia Kristeva）が交わした対談も収録。展示会場と展示作品をマルコ・クレマスコリ（Marco Cremascoli）が撮影、教皇フランシスコのパビリオンへの歴史的な訪問をユルゲン・テラー（Juergen Teller）が記録した写真も収録する。
イタリア語、英語併記。
参加アーティスト：
マウリツィオ・カテラン（Maurizio Cattelan）、ビントゥ・デンベレ（Bintou Dembélé）、シモーヌ・ファタル（Simone Fattal）、クレール・フォンテーヌ（Claire Fontaine）、ソニア・ゴメス（Sonia Gomes）、コリタ・ケント（Corita Kent）、マルコ・ペレゴ＆ゾーイ・サルダナ（Marco Perego & Zoe Saldana）、クレア・タブレ（Claire Tabouret）
Art, poetry, humanity and rights are intertwined and condensed in the volume With my eyes, published by Marsilio Arte, dedicated to the participation of the Pavilion of the Holy See at the 60. International Art Exhibition of Venice. It is an unprecedented reality with the physical and conceptual opening of the Women’s Prison House in Venice – Giudecca, which sees the involvement and active participation of inmates. This project opens new perspectives on social and artistic dynamics, challenging prejudices and conventions, reflecting on power structures in art and institutions.
Curated by the director of Palazzo Grassi, Bruno Racine and by Chiara Parisi, director of the Centre Pompidou-Metz, and realized under the artistic direction of Irma Boom, the catalogue documents the active dialogue that has taken place between the women prisoners who live here and the eight internationally renowned artists involved in the project: Maurizio Cattelan, Claire Fontaine, Bintou Dembélé, Simone Fattal, Sonia Gomes, Corita Kent, Marco Perego and Zoe Saldana, Claire Tabouret.
The title of the publication is taken from a fragment of poetry that reproduces an ancient sacred text and an Elizabethan poem. “I do not love you with my eyes” (Shakespeare, Sonnet 14) resonates with verses 42.5 of the Book of Job “My eyes have seen you”, in a cross-fading, which fades into an action where seeing is synonymous with touching with the eye, to embracing with the eye, to make the sight and perception dialogue.
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