アメリカ人ヴィジュアルアーティスト、タリン・サイモン（Taryn Simon）の作品集。本書は、儀式としての「悲嘆」を探る一冊である。

『喪失の職（An Occupation of Loss）』と題された本書は、2016年にニューヨークの「パーク・アベニュー・アーモリー（Park Avenue Armory）」で開催され、その独創的なパフォーマンスが成功を収めた同名作品の記録であり、「Professional Mourner」というプロの会葬者にまつわる作者の長年に及ぶ研究をまとめた一冊である。

「Professional Mourner」とは所謂「泣き屋」であり、葬儀に際して雇われ、式で号泣したり、涙を流しながら鎮魂歌を歌う仕事を指す。悲しみに暮れる家族らを弔い、励まし、慰める役を担う。

このインスタレーションでは、世界中から会場に集ったプロの会葬者たちが記念碑的な彫刻の中で追悼を一斉に発信するという哀惜の儀式が執り行われた。悲しみの解剖と、我々が運命と不確定要素を扱うために用いる複雑なシステムを深く考察すべく、パフォーマンス、サウンド、建築が組み合わされ、実施された。

本書は、このアメリカへの入国を目的に招かれた会葬者の複雑なビザ申請プロセスを通じて読者を作品へと導き、世界的な交流や身体の移動、芸術と文化のヒエラルキーを統べる根本的な構造を明確にしている。

In her monograph, An Occupation of Loss, artist Taryn Simon creates a detailed record of her years researching professional mourning, which culminated in a seminal performance at the Park Avenue Armory in 2016. During the installation, professional mourners from around the world simultaneously broadcast their lamentations within a monumental sculptural setting, enacting rituals of grief. The installation combined performance, sound, and architecture to consider the anatomy of grief and the intricate systems we use to manage fate and uncertainty.

The book leads the reader through the complicated visa application process for the mourners invited to enter the United States, revealing the underlying structures governing global exchange, the movement of bodies, and the hierarchies of art and culture.