PERSPECTIVE CORRECTION (5 POLES), 1967/1970 by Jan Dibbets

オランダ人アーティスト、ヤン・ディベッツ(Jan Dibbets)マルチプル作品。1970年3月から5月に「マルチプルズ・ギャラリー(Multiples Gallery)」で開催された展覧会「Artists & Photographs」で発表され、19名のアメリカ人およびヨーロッパ人アーティストが寄稿したマルチプル作品を一つの箱に収めた1,200部限定の「Artists & Photographs Box」のうちの1作品。

1967年から1969年にかけて、作者は壁、床、芝生の写真から構成されたシリーズ作『Perspective Correction(遠近補正)』を制作した。元々の作品のメディアにはキャンバスを用いており、それぞれの写真には鉛筆やテープ、地面を直接掘ったものなどで、正方形や円が描かれている。

キャンバス上の写真で見られる正確な幾何学形態は、三次元的な錯覚によって、写真上では正確な形に見えるように描かれているだけであり、現実に床や地面に描かれている形は台形や楕円であるにもかかわらず、斜めから見ることによって生じている遠近法によって、撮影された写真の上では正方形や正円に見えるように構成されている。幻像と現実、カメラが見ているものと眼が見ているものの違いに触れた一作である。

本作はシリーズのうち、1967年に制作されたものであり、キャンバスではなく紙に描かれたものの複製作で、キャンバス状の作品を制作する際のリサーチ段階を記録したものの一つである。そこには、空間に幾何学的な形の輪郭を描くために使用したテープから、この「遠近補正」に在り付くために用いた角度まで、さまざまな研究資料が記録されている。

本複製作で使用されている写真はアムステルダムの公園で撮影されている。タイトルが示すように、作者はこのでこぼこで広い地面の遠近を「修正(correct)」するために、矩形を描くロープの色や太さを慎重に選んだ。芝生を用いたのは、明確な遠近の参照がない環境であったためである。

「マルチプルズ・ギャラリー」を主催する「Multiples, Inc.」は、現在ギャラリストとして「Marian Goodman Gallery」を営むマリアン・グッドマン(Marian Goodman)を含む5人により、1965年に設立された。1966年から1992年に解散する30年近くもの間、20世紀で最も重要なアーティストたちのエディションを出版し、アート界に大きな影響を与え続けてきた。

本作および本展は、当時の新世代アーティストたちが自身の作品を展示するにあたり、今までと違う方法を模索していたニーズに応えるべく、「Multiples, Inc.」が企画した。本企画は、「写真」を伝統的なメディアとしてではなく、アートにおけるプロセスやコンセプチュアルな作品を記録するために用いた。ボックスは、オブジェクトとしての作品ではなく、一つの箱の中にモノクロのオフセット印刷で制作された多様なフォーマットを用いた本、パンフレット、リーフレット、フォルダーが収められていた。

このボックスは、型破りなアーティスト陣の人選、さまざまな形式から浮かび上がる彼らの個性、そして写真という媒体に対する今までと全く異なるアプローチが作品群から垣間見え、際立った存在感を放つものであった。当時商業的に成功したはと言えなかったが、現在では芸術的ランドマークとして重要視されている。

マリアン・グッドマンは、「マルチプルのマルチプル」であり、「ポータブル・ミュージアム」であり、「おもちゃ箱」でもあるこのボックスを、自身が出版に携わってきた長いキャリアの中でも最もエキサイティングなプロジェクトの一つであると認識している。

本作および本展を紹介するブロッシャーのテキストは美術評論家でありキュレーターのローレンス・アロウェイ(Lawrence Alloway)、ボックスのデザインは ダン・グレアム(Dan Graham)が手がける。

Artists & Photographs Box」参加作家:
アラン・カプロー(Allan Kaprow)アンディ・ウォーホル(Andy Warhol)ベルナール・ヴェネ(Bernar Venet)ブルース・ナウマン(Bruce Nauman)クリスト(Christo)ダン・グレアム(Dan Graham)、デニス・オッペンハイム(Dennis Oppenheim)、ダグラス・ヒューブラー(Douglas Huebler)エド・ルシェー(Ed Ruscha)ヤン・ディベッツ(Jan Dibbets)、ジョセフ・コスース(Joseph Kosuth)、メル・ボックナー(Mel Bochner)、マイケル・カービー(Michael Kirby)、リチャード・ロング(Richard Long)ロバート・モリス(Robert Morris)ロバート・ラウシェンバーグ(Robert Rauschenberg)ロバート・スミッソン(Robert Smithson)ソル・ルウィット(Sol LeWitt)、トム・ゴームリー(Tom Gormley)

※本書はデッドストック商品のため、経年劣化による変色やダメージがございます。あらかじめご了承ください。

EXHIBITION:
Multiples
会期:2024年3月16日(土)- 4月27日(土)
休廊日:日・月曜日(火曜日はアポイントメント制)
時間:11:00-17:00
開催場所:OSCAAR MOULIGNE
詳細


Between 1967 and 1969, Dutch conceptual artist Jan Dibbets created a series of works, consisting of photographs of walls, floors and lawns, titled “Perspective Correction”. In each canvas a square or a circle is drawn in pencil, tape or directly dug into the ground.

The precise geometrical forms were obtained through three-dimensional illusion, as in reality they were trapezoid or ellipsis appearing as squares or circles through oblique perspective.

Whereas the canvas focuses only on the photo, in some rarer versions on paper of Perspective Correction, the artist records the phases of his research: from the tape used to outline the geometric form in the space to the angle adopted to obtain the “perspective correction”.

This work was made in a park in Amsterdam. It is concerned with illusion and reality, the difference between what the camera sees and what the eye sees. As its title suggests, Dibbets wanted to 'correct' the recessive perspective of a large area of ground. He decided to use light coloured rope that would clearly mark off a cross shaped area of grass. He used much thicker rope for the two top, more distant, right-angles, so that they would appear to be in the same plane as those at the bottom of the photograph. The nearest right angles are approximately eight inches long, whereas those farthest away are each over thirty feet long. Grass was chosen because it did not have obvious perspectival references.

The work, originally part of the “Artists & Photographs” box set published by Multiples, Inc. in 1970, includes work by 19 artists. The publication was notable, above all, for the unusual selection of artists, the individuality of their work as presented in booklets, prints and collections of loose sheets, and their very different approaches to photography. Published in an edition of 1200 copies, the box—which was initially a commercial setback—is now considered an artistic landmark.

※Please note that there is visible damage and discoloration due to age.


by Jan Dibbets

REGULAR PRICE ¥9,900  (tax incl.)

folded paper
(offset lithographic print)
folded: 251 x 327 mm
opened: 498 x 648 mm
black and white
limited edition of 1,200 copies
1970

published by MARIAN GOODMAN GALLERY

published by MULTIPLES, INC.