フランス出身アーティストであり後期印象派の巨匠、ポール・セザンヌ（Paul Cézanne）の作品集。2021年6月から9月にかけて「ニューヨーク近代美術館（MoMA）」で開催された大規模展覧会に伴い刊行された。

本書は、作者の最も近代的な時期の創作に焦点を当て、非凡で実験的な紙上のドローイングに充てられたキャリアを網羅し、その評価とともに作品を鑑賞することができる一冊である。

主に画家として賞賛されてきた作者であるが、その画期的なヴィジョンの原動力となっていたのは、紙上のドローイングによる実験的なプロセスであった。作者は鉛筆と水彩を用い、個々の紙、またはスケッチブックのページ全体にわたり、探るような無数の線で形を描写した。繰り返しと変容を介して構図を組み立て、水彩を重ねることで、まるで魔法のように万華鏡さながらの色彩を生み出した。作者の最も近代的な表現の在りようを見ることができるのは、このようなドローイングの物質的な現実性である。作者は、未完成を受け入れ、その工程を可視化し、鑑賞者に「視る行為」への参加を積極的に促している。

本書は作者のキャリア全期からドローイングを集結させ、作者の紙上における創作の発展を辿り、主題をも超越する制作方法を探る。この作品群に、キュレーション的ないし保存的な研究を捧げることに対して、かつてないほど最も努力が尽くされた一冊である。

「アメリカ出版社協会（The Association of American Publishers）」が優れた学術出版物に対して贈る「PROSE賞（PROSE Awards）」を2022年に受賞している。

Cézanne at his most modern: a major career-spanning appraisal of his extraordinarily experimental drawings.

Although he is most often celebrated as a painter, Paul Cézanne’s extraordinary vision was fueled by his experiments on paper. In pencil and watercolor, on individual sheets and across the pages of sketchbooks, the artist described form through multiple probing lines; realized compositions through repetitions and transformations; and conjured kaleidoscopic color through layering of watercolor. It is in these material realities of drawing where we see Cézanne at his most modern: embracing the unfinished, making process visible and actively inviting the viewer to participate in the act of perception.

Published to accompany a major exhibition at the Museum of Modern Art, this is the most significant effort to date to unite drawings from across Cézanne’s entire career, tracing the development of his practice on paper, exploring working methods that transcend subject, and devoting both curatorial and conservation-based research to these remarkable works.