FREAKS by Richard Prince

アメリカ人アーティスト、リチャード・プリンス(Richard Prince)の作品集。2023年11月から12月までニューヨークのギャラリー「Nahmad Contemporary」で開催された展覧会に伴い刊行された。

新シリーズである本作に含まれる絵画作品の成り立ちは、50数年前にまで遡る。1972年に作者は黒のボールペンで頭を描いたシリーズを制作し、それらを「死人の」頭と呼んで、「私が作ったものの中で、初めて魂を持ったものだった」と述べた。

1988年、「死人の」頭は作者の「Hippie Drawings」シリーズにカメオ的に登場するようになった。大きな目玉で歯を剥き出しに笑う、ワイルドで生気あふれる「ヒッピー」たちは「僕らのようなフリーク、つまり変人をひとつにした」。描かれたひとつひとつの人物像によって、カウンターカルチャーのコレクティブが徐々に形成されていった。そこには、1960年代と1970年代の輝かしいヒッピー文化に対する視覚的な意識があった。

約20年が過ぎた頃、「Hippie Drawings」シリーズの登場人物は「High Times」という絵画作品群へと解釈された。「High Times」では、個別であったヒッピーたちは集合し、のけ者たちの友情と、反体制的同盟であるコミュニティを形成した。エネルギッシュな色合いを持つインクジェットやコラージュ、絵の具が各人物を形づくり、半世紀も前の自由の精神に彩られたヒッピー・フェスティバルによく似た、万華鏡のような集会を描いていた。

そうしたコレクティブは、安全だった。
しかし全体が分解すれば、後に残るのは各個の部分のみだ。
そして、仲間を失ったヒッピーは、ただのフリークだ。

2020年の夏、本シリーズは形を得た。それは解散した集団の痕跡であり、それを構成する要素は、過ぎ去った文化の棺を抱いていた。

現在では、北方ルネッサンスの版画制作の古の伝統を呼び起こした技術である入り組んだ線のパターンが、形やテクスチャを象っている。しかし、そうした絵はレンブラント(Rembrandt)の無遠慮な自画像でもなければ、アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer)による芸術的天才の宣言でもない。細密なディティールをもって描かれ、ユニークな特異性を掲げるそれらこそが「フリーク」、つまり変人なのだ。その縮れた髪の一本一本や、歯の間の隙間のそれぞれが、まるで虫眼鏡をかざしているかのように鮮明に描出されている。作者は「フリークは怪物と友達の間にいるものだ」と言う。「フリーク」は不気味でありながら親しみ深い、空間恐怖の人物像なのである。自身のアイデンティティを受け入れ、異質性を楽しみ、信念を貫き続けるものたちなのだ。

Exhibition catalogue published in conjunction with show held November 1 - December 23, 2023. Includes an uncredited introduction and an uncaptioned thumbnail-image exhibition checklist.

by Richard Prince

REGULAR PRICE ¥14,300  (tax incl.)

softcover
202 pages
240 x 304 mm
color, black and white
2023

published by NAHMAD CONTEMPORARY