BAG BOOK BACK by Maurizio Nannucci
イタリア人アーティスト、マウリツィオ・ナンヌッチ(Maurizio Nannucci)の作品集。本作は、アテネからフィレンツェ、シドニー、ニューヨーク、パリ、バンクーバー、北京まで、世界中の友人や家族との共同作業によるアーティスト・ブックという形でまとめられた一冊。アートの遍在性をより強く主張しながら、幅広い社会的相互作用を示唆するまさにアートそのものを問う作品である。
作者は、「芸術が存在するということを信じる理由はない(THERE’S NO REASON TO BELIEVE THAT ART EXISTS)」というフレーズが印刷された、赤と黄と青で構成された紙袋を制作した。このプロジェクトをある種のオープン・ネットワークであり、一つの本に成る旅であると考え、さまざまな都市、国でバッグを持った人々を写真に収めようとした。同時に、世界中の友人たちにバッグを送り、このメッセージの書かれたバッグとともに旅をして、いつでもどこでも写真を撮ってくださいと、そして写真を送るのを忘れないでください、と伝えた。
芸術作品特有の制約から解き放たれた機能的なオブジェクトである紙袋は、芸術作品が流通されるルートを外れ、さまざまな場所へと向かった。紙袋を持った人々を写した写真は、作者が社会的相互作用の場を定義しうる地図の座標を描いた。その座標は人、場所、状況を結びつけ、芸術作品と幅広い「鑑賞者」との間に一つの関係を生み、鑑賞者にとってはこの「流通」は、現代美術というものを構成するアイデアやヴィジョンを考察する一種の新たな方法となりうる。そして、このコンセプトを実現するための予測不可能な状況、プロジェクトの進行と記録を人々に委任したことは、ランダムに発生する交流の一つのスタイルである。
Maurizio Nannucci documents, in the form of an artist's book, a collective action with his family and friends around the world, from Athens to Sydney through Beijing, that literally puts the art in question to better assert its omnipresence while providing a wide range of social interaction.