THREADS OF METAMORPHOSIS: FABRIC PICTURES by Sigmar Polke
ドイツ人画家のジグマー・ポルケ(Sigmar Polke)の作品集。2014年から2015年にかけてニューヨークの「Nahmad Contemporary」で開催された展覧会に伴い刊行された。
本書では、1980年代から晩年まで30年間にわたり制作された、多様かつ独特なスタイルで布を用いてきた作品群を収録。ジャンルや伝統的なスタイルにとらわれず、素材やメディアの豊かさを特徴とする作者は、遊び心溢れる扇動者として独特な世界観をもって作品を作り重ねた。戦後最も謎めき、影響力の強いアーティストの一人として名が挙がる作者は、1960年代初期にドイツの消費文化が高まる中で欲されるものを題材とし、1964年に布を用いた絵画作品を初めて制作した。
布地は作者にとって実験場となった。1980年代前半、数十年間の間に重ねた旅行や写真に対する探究心からインスパイアされ、有毒な顔料や化学物質など、考えうるあらゆる型破りな素材を見つけて使用し、それが時間や温度、湿度、光によって変化、反応するという不安定な作品を生み出した。さまざまなイメージや形状を重ね、具象と抽象の二重性を持たせながら、意識の状態やオカルト現象を視覚的に表現することにも長けていた。
作者は断片化された時間を紡ぎ、異質なメディアを用い、美術史上の重要な瞬間や寓意、文化的な文脈に光を当ててきた。あらゆるジャンルのイメージを自由に入れ替えて組み合わせ、現代の複雑なものを表すメタファーを作り出してきたが、その根底にあるのは、芸術や人生において絶対的な意味を持たせ続けることが不可能という考えであり、意味の本質そのものに疑問を投げかけている。
Published on the occasion of the exhibition: Threads of Metamorphosis: Fabric Pictures by Sigmar Polke
November 4, 2014 - January 22, 2015