MEMORY WARE by Mike Kelley
アメリカ人アーティスト、マイク・ケリー(Mike Kelley)の作品集。2016年11月から12月にかけてニューヨークの「Hauser & Wirth」で開催された展覧会に伴い刊行された。
40年間のキャリアの中で、作者は美的慣習に対し批判的な疑問を投げかけ、あらゆる形態の文化を検証してきた。本書では、21世紀最初の10年間に制作された約100点の「メモリー・ウェア(Memory Ware)」シリーズとその関連作品を紹介する。本シリーズは、アメリカ南部やヴィクトリア朝時代のイギリスの黒人社会で流行した民芸品から、「メモリー・ウェア」という言葉を借用している。この民芸品では、ボトルや花瓶、ランプといった一般的な日用品の表面に粘土状の素材を塗り、鍵やボタン、貝殻、ビーズといった身の回りによくある小物や記念品を埋め込んでいる。作者が初めてこのジャンルの作品に出会ったのは、2000年にトロントの骨董市でこのような状態のボトルを購入したときであった。記憶や、過去の歴史を持つ素材を再利用することに以前から関心を抱いていた作者は、工芸や民芸の美学に長年関わってきたこともあり、この発見をきっかけに、「メモリー・ウェア」の美学にまったく異なる目的を与えて展開する可能性を見出した。
本シリーズは、壁掛けの平面作品(「メモリー・ウェア・フラット」と呼ばれる)と、独立した立体作品の両方で構成されている。この民俗的な伝統の流用により、下敷きとなるオブジェクトを排除し、より多様な記念品を埋め込むべく、オリジナルの手法を拡げている。それとは対照的に、「メモリー・ウェア」の彫刻作品は、ファウンド・オブジェクトが密集した塊と、最小限の、あるいは装飾のない領域とを並置することで、一つの全体的な構造も提示している。
Over the course of his four-decade career, Mike Kelley (1954–2012) critically questioned aesthetic conventions and examined all forms of culture. The approximately 100 Memory Ware and associated works were made during the first decade of the 21st century; all are reproduced in this catalog. Named for a genre of North American folk art in which everyday utilitarian objects such as vases are coated with a claylike substance and then embedded with small objects including shells, beads and buttons, Kelley’s Memory Ware series consists both of wall-hung works (known as Memory Ware Flats) and freestanding pieces. The artist’s appropriation of this folk tradition eliminates recognizable underlying objects and expands the original method to include a wider variety of keepsakes. The Memory Ware sculptures, by contrast, juxtapose dense clusters of found objects with minimally or undecorated areas and reintroduce an overall structure.