TOFU-KNIFE by Kohei Kawatani [SIGNED]
日本人写真家、川谷光平の作品集。カッセル・フォトフェスティバル(ドイツ)が主宰する「Kassel Dummy Award 2020」にて、日本人初の First Prize(最優秀賞)を受賞し、副賞としてアワードサポーターであるトルコの印刷所「MAS」が運営する出版部門「MASA」より出版された一冊。
「本作は、現代写真における芸術性(アート)と商業性(コマーシャル)との間にある複雑な関係性を見事に表現している。その形状とデザインにおいて2つの面を模しており、一方は全ての写真がナンバリングされ、インデックスを用いて明確にリスト化 / カタログ化された『科学的データベース』であり、もう一方は写真が綺麗にかつ洗練され、通常広告で用いられるような印象を持つ薄くて光沢のある紙に印刷された『消費者向けの雑誌』として存在する。写された被写体や場は視覚的に楽しさを与えているー青々とした植物、繊細なテクスチャー、整然と並ぶインテリア、美しいということだけが解読できる魅惑的な物質ー 意図的に文脈から切り離すことは、イメージを既成の物体に還すと同時に、その意味の流動性、多様に存在するクリエイティブな解釈を感じ取ることを前景化させる。
作者の視覚表現は、『(tofu) knife』、つまり『(豆腐の)包丁』のように、確固たるもの、鋭いものであるにもかかわらず、その写真は一見感情を持たないものにしか見えない。思いもよらないフレーミング、細部へのこだわり、主観性だけでない確かな繊細さや優しさ、柔らかさ(ある意味豆腐そのものをも感じさせるような)を感じさせる示唆的な色使いが見て取れる。」
-バーバラ・グレゴフ(ORGAN VIDA International Photography Festival キュレーター)
「Kassel Dummy Award」には、毎年世界各国から400 冊近くの応募があり、数あるダミーブックアワードの 中でも草分け的存在とされている。コロナ禍の渦中に約10都市を巡回する形で行われた選考会では、世界を覆う重たい空気を払拭するような鮮やかなイメージが高く評価された。また、装丁を担当したデザイナーの加瀬透は、本書を含む数作品で「JAGDA 新人賞2021」を受賞。本書と同名の作品シリーズ「Tofu-Knife」からセレクトされた10点は、「Japan Photo Award 2019」においてシャーロット・コットン(Charlotte Cotton)賞を受賞している。
記事:川谷光平インタヴュー 世間体の良さのなかに毒を盛る、マキシマムな写真表現(IMA ONLINE)
記事:Kassel Dummy Award 世界を目指す写真家のためのリスト vol.4 審査員に聞くダミーブックアワードの応募のコツ(IMA ONLINE)
"»Tofu-Knife« by Kohei Kawatani is a brilliant exploration of the complex relationship between the artistic and commercial in contemporary photography. In its form and design, the photobook mimics both a scientific database – all photographs are clearly listed in the index and catalogued by numbers – and a customer magazine – the photographs are clean and polished, printed on a thin, glossy paper usually used in the advertising context. The depicted objects and environments are above all visually pleasing – lush vegetation, subtle textures, neat interiors, and alluring objects whose only decipherable function is the aesthetic one. Deliberate decontextualization reduces the images to ready-made objects, as well as foregrounding them the fluidity of their meaning, susceptibility to various creative interpretations. Even though Kawatani’s visual expression is decisive and sharp like a (tofu) knife, his photographs are only seemingly impersonal – his unexpected framing, attention to detail, and suggestive use of color hint not only at subjectivity but a certain delicacy, tenderness, and softness (similar, in a way, to tofu itself).”
—Barbara Gregov, Organ Vida Festival, Zagreb.