STILLS & STONES by Mark van den Brink
アムステルダムを拠点として活動するフォトグラファー、マーク・ファン・デン・ブリンク(Mark van den Brink)の作品集。「シボレー・バン」のハンドルを握り、スパイカメラで知られる「ミノックス(Minox)」製の小型カメラを持って自分の周りの世界を撮影する「目立たぬ覗き魔」として何年も旅を続けていた。時折、望遠鏡や双眼鏡に小型カメラを取り付け、遠くを撮ることもあった。しかし本作では、「ミノックス」で初めて静物を撮影することにしたのである。
それは石から始まった。自分の拳よりも大きいずっしりとした石を手に取り、まるで彫刻家が台座の上に完成したての粘土の塊を置くかのように、石をスツールの上にセットした。背景には、キャンバス地の大きい布を吊るし、フラッシュもライトも使わず昼間の光だけに頼った。ピントを合わせるには、手元に巻尺が必要であった。いつものような、気楽なアングルで一瞬のうちにさっと捉えるカジュアルなショットは不可能であり、「ミノックス」の持つ長所は全て無きものとなった。他のカメラの使用を頑なに拒み、この被写体を選んだ結果、作者は撮影のために新たな作戦を考えなければならなかった。それでも「ミノックス」に拘った理由は、その写真をプリントした時に現れる、フロッタージュやオートクロームが出す独特の表情に似た粗い粒子感を残したかったためである。「ミノックス」フィルムは非常に高価であったこともあり、自分でフィルムをカットしてカスタマイズしたロールを作り、装填した後に試し撮りをしていた。生まれたばかりの息子にそのカメラを向けることもよくあった。
Amsterdam-based photographer Mark van den Brink has spent years on the road, often behind the wheel of his Chevy van, as an inconspicuous voyeur, capturing the world around him with a Minox camera. But for ‘Stills & Stones’, he decided to put his camera to work shooting still lifes for the first time. It started with a stone, set on a stool and with a suspended canvas tarp as the backdrop. All the advantages of the Minox went out the window. To focus, he needed a tape measure on hand. His usual split-second, casual shots from a comfortable angle were impossible. The subject matter, combined with a stubborn refusal to use any other camera, forced him to adopt a new strategy.