STUDY MAGAZINE VOLUME 09
ニューヨークを拠点に活動するフランス人編集者、作家、スタイリストのクリストファー・ニケ(Christopher Niquet)によるファッション&カルチャー誌。毎号一人のアーティスト、写真家、タレント、作家の意見や作品に焦点を当て紹介する。クリストファー・ニケは、これまでにカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)やクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)、アンナ・モリナーリ(Anna Molinari)をはじめとしたデザイナーの舞台裏で働き、『ヴァニティ・フェア(Vanity Fair)』誌の寄稿ライター、『エル・フランス(ELLE France)』誌のエディター、『セルフ・サービス(Self Service)』誌のスタイリストを務めた経験を持つ。
アートディレクションは「Rupert Smyth Studio」が手がける。ファッション、アート、本を愛する人たちのコレクターズアイテムとして毎号異なるデザインで企画されている。
第9号は、ニューヨークを拠点として活動するフォトグラファーであり、テキスタイル・アーティスト、金工職人、キュレーターのヴィヴァ・ヴァディム(Viva Vadim)による、静かな発見の瞬間の重なりが織りなす軌跡である。本書は、この写真群に捧げられた一冊であり、22歳のアーティストによる初めての出版物となる。まるで車のボンネットの上に広げられた地図のようにページを跨ぎ、濾過されていない作者のヴィジョンを我々に垣間見せる。この作品たちは、アメリカの本質を捉えている。それは何世代にもわたって継がれてきた通過儀礼であり、外へ、そして内へと向かう旅として役割を果たし、大いなる未知の世界の意味を探るものである。この写真には、期待という重荷がまだのしかかっていない素晴らしい美しさがある。従わなければならない、演じなければならない、喜ばせなければならないという必要性にまだ抑えつけられていない。若きアーティストたちを都合の良いように型へとはめてしまう批評や補正がもたらす終わりなきサイクルから解き放たれている。むしろ、この作品は純粋な状態で存在している。
作者のレンズは、自然や、道すがら見つけた儚い細かな部分に視線を向けている。夕暮れのゴーストタウン、砂漠のハイウェイが描くシャープなライン、駐車場の淡い混沌。これは単なる場所の記録ではなく、その場所のムードやひとときを静止させた束の間の記録でもある。光と影、見慣れたものと初めて出会うものとの間に生まれた優しい空間で語られる物語なのである。
本号は、この新進気鋭の才能を紹介するだけではない。どのように見るのかを世界が我々に教える前に、世界を見ることの意味を思い出させてくれる。
ライターであり俳優のエレオノール・コンド(Eleonore Condo)が著した作者の肖像、劇作家であるジェイコブ・ワッソン(Jacob Wasson)が書いた戯曲の序幕、アーティストであり詩人、環境アクティビストのウィルソン・オリエマ(Wilson Oryema)による詩も掲載されている。
あわせて、別冊ではフォトグラファーであり映画監督のブルース・ウェーバー(Bruce Weber)とスタイリストのアカリ・エンドー=ゴート(Akari Endo-Gaut)が、作者の自宅を訪れた記録を掲載。自らのヴィジョンを押し付けるクリエイターとしてではなく、静寂な証人となるためである。ファッションの見開き特集ページというよりも、若きアーティストの技術と人生が交差したポートレートのように仕上がっている。
コントリビューター: アカリ・エンドー=ゴート、ビバ・ヴァディム、ブルース・ウェーバー、エレオノール・コンド、ウィルソン・オリエマ、ジェイコブ・ワッソン
※ 本書は製作プロセス、紙の性質上、カバーの角部分に軽度のダメージがある可能性がございます。予めご了承ください。
The ninth issue of Study marks a moment of quiet revelation. It is entirely devoted to the photography of Viva Vadim, a 22-year-old artist whose work is being published for the first time. This collection, spanning the pages like a map unfolded on the hood of a car, offers us a window into her unfiltered vision. Her images capture the essence of America, a rite of passage that has, for generations, served as both a journey outward and inward—a search for meaning in the great unknown.
There is a striking beauty to these photographs, untouched by the burden of expectation. They are not yet weighed down by the need to conform, to perform, to please. They are free of the endless cycle of criticism and revision that so often molds young artists into palatable versions of themselves. Instead, her work exists in a state of purity.
Vadim’s lens turns its gaze to nature, to the transient details of the road—a ghost town at dusk, the sharp lines of a desert highway, the muted chaos of a parking lot. These images are not just records of place but of mood, of fleeting moments held still. A narrative told in light and shadow, in the tender space between the familiar and the strange.
This issue, is more than an introduction to an emerging talent. It is a reminder of what it means to see the world before the world has taught you how to look.
The issue also contains a portrait of Vadim written by Eleonore Condo, the first scene of a play written by Jacob Wasson and a poem by Wilson Oryema.
For the fashion insert photographer Bruce Weber and stylist by Akari Endo-Gaut went to the home of Viva Vadim, not as creators imposing a vision but as quiet witnesses to hers. The result is something that feels less like a fashion spread and more like a portrait of a young artist at the intersection of her craft and her life.
Contributors : Akari Endo-Gaut, Viva Vadim, Bruce Weber
Contributing Writers: Eleonore Condo, Wilson Oryema, Jacob Wasson
Art Direction : Rupert Smyth Studio