MOTHER, WONDER by Roni Horn
アメリカ人アーティスト、ロニ・ホーン(Roni Horn)の作品集。南アイスランドのランドブロートは、地質学的な特徴によりユニークな風景が生まれた土地である。科学よりもおとぎ話に近い存在であり、妖精やエルフが生まれる世界で唯一の土地だと想像が浮かぶのも無理はない。また、この土地にある感覚的な安心感や満足感を見出すことも想像に容易い。本書は、作者が1989年に始め、本という形態のみで存在する「To Place」シリーズの11冊目であり、各巻がアイスランドとその地で作者を取り巻く体験に焦点を当て、全体としてはアイデンティティと場所の関係性を問いながら流れてゆく会話を象っている。多くの注目を集めた「To Place」シリーズには、「Bluff Life」(1990年)、「Folds」(1991年)、 「Lava」(1992年)、 「Pooling Waters」(1994年)、「Verne’s Journey」(1995年)、 「Haraldsdóttir」(1996年) 、「Arctic Circles」(1998年)、 「Becoming a Landscape」(2001年)、 「Doubt Box」(2006年)と「Haraldsdóttir, Part Two」(2011年)が存在する。
本作は、多様性、知覚や場所への作者の探究心を際立たせる40点の瞑想的な写真作品のインスタレーションで展示は構成された。1970年代から、作者にとってのアイスランドはインスピレーションの源泉であり、「You Are the Weather」(1994-1996年)など高く評価されているいくつもの作品の中心となっている。南アイスランドの特徴的な丘々を写すことにより、作者は気候や時間、場所の条件に依る環境や、環境に取り囲まれる地形を比べ、黙想させる。そのような地理学的な現実感が、作品に強烈な土地感覚を浸透させているのである。元々2010年から2012年にかけて撮影された作品群であるが、スムースペーパーに印画されることにより、色やコントラスト、明瞭さを正確に再現し、地形の特徴を捉えることに成功している。
記事:ロニ・ホーンインタヴュー「水の中にあなたを見るとき、あなたの中に水を感じる?」(IMA ONLINE)
In the south of Iceland is Landbrot, whose geologic particulars present a unique landscape. It is a place closer to fairy tales than to science, indeed a place easy to imagine as the singular source of fairies and elves worldwide. It is easy, too, to imagine the sensual comfort and satisfaction to be found there. Mother, Wonder is the eleventh book in Horn’s ongoing series “To Place,” which she initiated in 1989 and exists only in book form. All the volumes focus on Iceland and the evolving experiences of the artist there; together they form a flowing dialogue addressing the relationship between identity and place. The titles to date in the coveted “To Place” encyclopedia are Bluff Life (1990), Folds (1991), Lava (1992), Pooling Waters (1994), Verne’s Journey (1995), Haraldsdóttir (1996), Arctic Circles (1998), Becoming a Landscape (2001), Doubt Box (2006) and Haraldsdóttir, Part Two (2011).