SELF-PORTRAITS by Yurie Nagashima [SECOND EDITION]
日本人写真家、長島有里枝の作品集。
2017年、東京都写真美術館で開催された個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々」で展示された新作のひとつに、700点近いセルフポートレイトからなるスライドショーがありました。
『Self-portraits』は、そのなかから作家本人が選び抜いた、24年分のセルフポートレイトを集めた写真集。 1992年、バックパッカーとして旅をしていた学生時代のモノクロ作品から始まる本書は、アーチストとして知られるきっかけとなる初期のヌード作品や、90年代東京の空気を伝えるストリートでのセットアップ、カリフォルニア芸術大学留学中に撮影された写真へと続きます。帰国し、親となった2000年代以降にも、長島はセルフポートレイトを撮り続けています。 巻頭に収録された、アパーチャーファウンデーションのクリエイティブダイレクター、レスリー・A・マーティン(Lesley A. Martin)との対談で長島は、これらのセルフポートレイトはアクティビズムの一形態であると述べています。
また、特に初期の作品を指して、自らを被写体としてヌードグラビアや写真集のパロディーを撮ることは「わたしにとっては、女性の身体に向けられる男性社会からの視線がどのようなものであるかに言及するための方法」なのだともいいます。 「ヘアヌード写真ブームがとにかく許せなくて、動機がなんであれ、男の目的のために女が消費されるなんてあり得ない」という長島は、”自分の身体は自分のもの” だという主張あるいは主体としての女性のありかたを、独自の表現でわたしたちに提示します。
「特にフェミズムの文脈において、セルフポートレートでは作者と主題、両方の役割を自分で果たします。長らく育まれてきた、写真表現における性別役割分担への抵抗を、象徴しているんです。」 初期の作品に顕著であるパフォーマティブな側面は、シークエンスが進むにつれて次第に個人の日記のような印象を強めるように見えます。しかしそれも、幼い子や犬の姿が画面に登場する頻度が減り、ついに見られなくなる頃には再び、インスタグラムなどのSNSから生まれた「セルフィー」や「映え」のような、2010年代以降の新しい写真文化に対抗的な、スナップショットなのかセットアップなのかを一概には判別できない、コンセプチュアルな作品へと移行していきます。 「写真はほぼ時系列に並んでいるから、わたしの変化がわかりやすいと思います。撮影方法、レンズそして機材。コンパクトフィルムカメラも4x5も、よく使うようになったのは子供が生まれてから。自分の経験や環境が変わると、主題も変わります。
出産を機に、フェミニズム的な問題を取り上げて作品にすることが多くなり、2011年の原発事故を機に、自国の政治により目を向けるようになりました。個人的な興味や加齢によっても、主題は変わりました。 若いときは、自分の身体は自分のものだから好きなように使っていいと思っていましたけれど、息子が生まれてその考えは完全に変わりました。セットアップであれ、スナップショットであれ、わたしの写真はとてもパーソナルな作品だと思います。」
記事:長島有里枝 × ミヤギフトシ対談
違和感を他者に伝えるために、パーソナルなセルフポートレイトが語るもの(IMA ONLINE)
記事:長島有里枝が自らを撮る理由。撮ることは、女性の人生を可視化すること - 生活を変えるのは女性、というジェンダー役割は変わっていない(She is)
記事:長島有里枝 ―― フェミニズムの視点からその先へ【IMA Vol.36特集】(IMA ONLINE)
EXHIBITION:
ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で
会期:2021年10月16日(土)- 2022年3月13日(日)
休館日:月曜日(ただし11月1日、11月22日、2022年1月3日、1月10日は開場)、 11月24日(水)、12月29日(水)〜2022年1月1日(土・祝)、1月4日(火)、1月11日(火)
時間:10:00-18:00 / 金・土曜日は20:00まで
開催場所:金沢21世紀美術館 展示室7~10、交流ゾーン
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※本展は終了いたしました
TALK:
長島有里枝+岩根愛+藤岡亜弥 トークイベント
日程:2020年8月21日(金)
時間:19:00-20:30
開催場所:百年 *オンライン配信会場となります。トークご参加のためにご来場いただく必要はございません。
参加費:1,500円(税込)
開催形態:オンライン / リアルタイム配信のみ
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※本イベントは終了いたしました
長島有里枝+カナイフユキ トークイベント
「Personal is political ーわからない”わたし”を探す表現」
日程:2020年9月5日(土)
時間:19:00-21:00
場所:本屋B&B *オンライン配信会場となります。トークご参加のためにご来場いただく必要はございません。
参加費:1,500円(税抜) / 書籍付 5,500円(税抜)
開催形態:オンライン / リアルタイム配信のみ
詳細
※本イベントは終了いたしました
長島有里枝 ✕ 伊藤貴弘 トークイベント
日程:2020年10月3日(土)
時間:19:00-20:30
開催場所:NADiff a/p/a/r/t *オンライン配信会場となります。トークご参加のためにご来場いただく必要はございません。
参加費:1,100円(税込)
開催形態:オンライン / リアルタイム配信のみ
詳細
※本イベントは終了いたしました
Shown originally as a 30-minute slideshow of over 600 images as part of Nagashima’s survey exhibition And a Pinch of Irony with a Hint of Love at Tokyo Photographic Art Museum in 2017, Self-Portraits by Yurie Nagashima charts the evolution of this major female artist over a period of 24 years from 1992-2016. The opening photograph taken while on a backpacking trip is closely followed by her early, much publicized, self-portrait nudes; scenes amongst her peers in Tokyo in the mid-90s through her studies abroad at CalArts in Los Angeles. Returning to Tokyo in 1999 she continued to take self-portraits through her pregnancy, the birth of her son and on during the proceeding years of maturing and motherhood. From a conversation with Lesley A. Martin, Aperture Foundation’s Creative Director, in the introduction Nagashima talks about her early self-portraits as a form of activism, that by creating a parody of self-portrait pin-ups she found “a way of talking about how the gaze of male society works on the female body.” She goes on “I was angry at the Hair Nude boom, and thought, “Okay, there’s no way men can use and consume a female body for their own agenda” literally claiming the agency of images of her own body on her own terms. “I realized that self-portraiture is an important genre of photography, especially in the context of feminism…. The self-portrait means that you can take on both roles, as a model and as a photographer. When you have a camera on a tripod, you have the space in front of the camera and also the space behind the camera. It’s very symbolic. It’s a way of taking action against the historical roles of the male and female in photography.” While the early work is clearly performative in this way as the sequence moves on, it seems to get more personal and diaristic.
“In this book, I sequenced the images chronologically, so you can see the change. There are often reasons behind my change in camera, lens, or style of shooting. For example, I started using compact-film cameras more, right after I had a child. My subject matter is often changed by my experiences and by the social changes I experienced. I became more aware of feminist issues after having a child, and then the earthquake in 2011 made me face domestic political issues. My personal interests also changed, and aging, too, is just another cause. When I was young, I thought my body was my own property so I could do whatever, but my son changed that idea completely. I think that my photographs――both set-ups and snap shots――are quite personal.”
Book design by Charlotte de Mezamat, Interview by Lesley A. Martin, translation by Akiko Ichikawa